血液透析を行うには、まず血液を体からとり出し、再び体内にもどす血管が必要となります。このため、四肢のどこかで小手術を行って、動脈と静脈を繋ぎます。これをシャントと呼びます。透析を行うためには十分な血液量(血流量)が確保されていることが重要です。シャントは、透析を続けていくうえで患者さんの「命綱」です。長持ちさせるには、閉塞(狭窄)と感染を予防することです。
1.シャント閉塞の予防
シャント閉塞の予防は、次の3つが重要です。
(1)圧迫による血流の停止をなくす。
(2)過度の血圧低下による血流不良をなくす。
(3)感染を防止する。
具体的な例をあげてみますので、次のようなことに注意してください。
- 手枕をしない。睡眠中、シャント側の腕を体の下にして圧迫しない。
- シャント側の腕に重いものを持ったり、ぶらさげたりしない。
- 透析を終了して止血するときにも、シャントの血流を停止させない範囲で圧迫する。
- 腕時計でシャント血管を圧迫しない。
- シャント側の腕で血圧を測定しない。
- シャント部を叩いたり、物に強くぶつけたりしない。
- 透析後、針穴を保護しているガーゼは翌日までに取り除き、シャント血管をいつまでも圧迫したままにしない。
- 体重の増えすぎに注意する。(過度の除水は、透析後に著明な血圧低下をきたす原因となります.血圧が低下して血流が悪くなるとシャントが閉塞しやすくなります。)
- シャントの血流をときどき確めかる。異常があればすぐに受診してください。シャントに手を当てて、ブルブルと震えるような細かい振動(スリル)をみたり、ザーザーという滝のような音(血管音)を聴診器で聴くことができれば血流が保たれている証拠です。
- シャント感染の予防を心掛ける。シャント感染は主に以下の原因で起こります。
a.穿刺部付近の不衛生、b.シャント肢のかぶれ、かき傷、c.全身の抵抗力の低下。 - シャントのある腕の清潔を保ち、爪などで傷をつけたりしない。
- 傷やかぶれに気づいたらすぐに治療する。
- 透析直後の入浴は控えて、針穴をぬらさないように注意する。ぬれてしまった時はきれいに洗って、乾燥させるようにします。ぬれたガーゼや絆創膏をつけたままにしておくと、すぐに感染をひき起こします。
2.シャントが閉塞するときの症状
- スリルや、音が弱くなる。
- 聴診器でシャントの音が聞こえなくなり、シャントの拍動しか触れない。
- 血管に沿って痛みがある。
- 血管が固く触れる。
- シャント肢が今までよりも冷たく感じられる。
- シャントの血管に熱感を感じる。
- 針穴の周囲や腕が赤く腫れる。
※異常を感じた時は、すぐに連絡してください。翌日の透析まで様子をみようと思ったり、夜中で大変だからなどと考えず、素早い処置が必要です。
※風邪やその他の原因で体温の上昇が考えられる場合、体温測定はシャントのない腕のわきの下で測定してください。シャントのある腕の腋の下で測ると、体温が0.5度ほど高く測定されてしまいます。
***シャントの血流量が大きくなりすぎると心臓の負担となり、小さくする手術を行うこともあります。血流量がそれほど大きくなくても、心臓の力に余力がないときには、シャントなしに透析を行うこともできます。