須田クリニック・須田内科クリニック|高田馬場 内科・血液透析

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透析患者さんの歯科治療

出血傾向

腎不全末期に血小板機能を阻害する種々の代謝産物の蓄積があると、出血傾向が現れます。歯齦出血は稀でなく、鼻出血・消化管出血はしばしば救急医療の対象となります。シャント(透析治療を行うために人工的に作成した動静脈瘻)の閉塞を防止する目的や、狭心症・脳血栓症・末梢循環不全などの治療のためにワーファリン・アスピリン・パナルジン・アンプラーグ等の抗血栓薬を使用している場合にも出血傾向が見られることがあります。
また造血ホルモン(エリスロポエチン)発売以前から透析を続けていて、頻回の輸血を受けたことのある人はC型肝炎を持っていることがあり、時には肝硬変もみられます。そのような場合には血小板数の減少と出血傾向が見られてきます。
しかし安定期の透析治療を受けている患者さんは、特別の出血傾向を示すことはあまりありません。

ヘパリン

体外血液循環を行うためにヘパリンを使用する場合、成人では1時間に500から1000単位(0,5から1ml)が使用されます。血液透析は週3回ずつ行われますが、1回4ないし5時間の透析にヘパリンは4から5ml使用されます。ヘパリンの半減期はおよそ60分ですから、透析治療後2時間ほど経過すれば、臨床的に問題となる量のヘパリンは血中に存在しないと考えて良いでしょう。
ヘパリンを使用しても、血液透析直後の歯科治療は易出血性と言う点からは問題ないことになります。しかし透析治療は過剰な体液の除去を重要な目的の一つとしているために、透析直後の患者さんは比較的脱水の状態にあり、ショックの予備状態にあると考えるべきでしょう。

歯周病

血液透析患者さんは、食欲不振・食事制限・消化吸収障害・代謝障害等によって栄養不足や貧血の状態になりやすく、このために歯周病に罹患しやすいのではないかと考えられますが、文献的な記述はあまり見られません。須田クリニック(東京)の患者さんについて調べたところでは、さほど目立った所見は得られませんでした。しかし地域ごと、施設ごとに差がある可能性もあり、調査を進めることの意義は大きいかもしれません。
以上のことを踏まえて治療を行えば、出血性の血液疾患がないかぎり、透析患者さんが歯科治療後に多量の出血を来すことはまずないでしょう。慎重を期する場合、歯科治療が終了した後に、待合室で30分ほど様子を見て、再度止血の処置を行えばよいと思われます。

フサン

午後ないし夕方から透析治療を開始する患者さんが、透析医に無断で抜歯処置を受けることがあります。この場合、透析を開始するとヘパリンの作用により出血が増大してきます。その場合には、ヘパリン投与を中止してフサン(メシル酸ナファモスタット)を抗凝固剤として使用すると良いでしょう。ただしこのような場合のフサンには、健康保険が適用されません。体内に残ったヘパリンはプロタミンで中和することができます(1mlのヘパリンは約0.8mlのプロタミンで中和されます)。
フサンは血液凝固に関与する多数の酵素を阻害することによって抗凝固作用を発揮します。フサンの血中半減期はわずか数分と短く、透析された血液が体内へ戻るときには、大部分が分解されています。従ってフサンは体外の血液のみ凝固時間を延長させて、体内の血液の凝固時間は延長させない抗凝固剤です。異常な出血があるときにも、出血を増加させることなく透析を行うことが可能です。
出血が少量の場合、ガーゼ塊を噛んでいれば止血できると考えて良いでしょう。